社長の意思決定は難しいのですが、何があれば意思決定しやすくなるのか。
前回に続いて、3つ目の視点についてお話します。

3.自分が持っていない視点

何度かブログでもお伝えしていますが、人間の限定合理性バイアスを決して忘れないよう情報を収集するということです。

私たち人間の性質として、自分が見たいものだけ見る、自分の見えている範囲の中だけで合理的判断をする、雲った眼鏡をかけて情報・状況を見る、ということが当たり前に行われます。
そして、フラットにモノを見る努力や事実を見るトレーニングをしない限り、歪んだ見方をしていることに気づきません。
よくあるのが、部下の情報より社長の自分の情報の方が正しいと思ってしまったり、自分の意見を正当化するための情報しか目に入らない、伝わっていると思っていても実は伝わっていない、などという具合です。

こうなると、意思決定を間違える可能性も増えます。
意思決定を間違えれば、効果が少ない手を打つことになり、時間は取られる上に問題は解決せず、多くの問題・事象は繋がっているので、次々と他の問題も発生し、問題が増えてきます。
より意思決定が大変になるし、もちろん、お金もかかりますので、目も当てられません。

では、意思決定をしやすくするためにどうしたらよいか。
どんな視点を持ったらよいか。

それは、社内の情報、お客様の本音、お客様の行動、他社動向など。
もちろん、社員の意見、社員が持つ情報も大切に扱うことが重要です。
そのためには、社員が意見や情報を伝えやすい職場、人間関係、会社の風土にしなければなりません。

そして、見落としがちですが、見落としてはいけない視点が2つ、
「組織」と「未来・時間軸」です。

まずは「未来・時間軸」
人によって違いますが、近い未来だけを見ている人は見落としがちな視点です。
時間に追われ、焦ったり、余裕がない場合には特に近い未来しか考えられなくなります。
または、時間は必ず1秒ずつ繋がって流れていますが、時間を一気に飛ばして考える癖のある人も、見落としがちです。
例えば、今月と3か月後の推移を見ても、どのようにこの3か月間は時間が流れるのかをコマ送りで考えることが重要なのです。

もう1つは「組織」の視点です。
例えば、人間関係のいざこざが起きると「人の資質・性格」のせいだと思ったり、課題が前に進まないのも「人材のやる気不足や能力不足」のせいにしがちです。
確かにそういう部分もあるかもしれません。
しかし、そればかりではなく、組織がそうさせていたり、組織がそういう問題を引き起こしている原因でもあるのです。
すべては繋がっている、のです。
例えば、「課題達成がなかなかなされない」というケースについて考えてみましょう。
その理由は、「人材の能力不足」もあれば、「優先順位を考えられるような情報を与えていない」「課題を進められるような知識を得る場を提供していない」「他の仕事で手いっぱい」「誰にも相談できる人がいない」「お客様からの情報が届くのが遅れている」などなど、他にも多くの理由が挙げられます。
こんな時、どれが1つにフォーカスしがちです。
最も多いケースが、目に見えて、しかも外部環境の責任にするパターンです。
「お客様からの情報が届くのが遅れている」が目につくので、「仕方ないね」となりがちですが、問題は「自社組織」にもあるのです。

人材の育成、関係性の構築、相談しにくい上司とマネジメント、プロジェクトの責任者不在、他にもありますが、これらはすべて「組織」の問題です。
そして、「組織」の問題がレバレッジポイント(コスパの良い解決すべきポイント)なのです。
上記もしかり、いろいろな方とお話をしていると、組織の問題が大きいなぁと感じることが多々あります。
しかし、事業の問題に気づいても、組織の問題には気づきにくいのです。

なぜなら、専門分野や数字に関することは学ぶ機会も多く、一生懸命学びますが、組織に関する勉強をする機会が少ないので組織の問題に気づかないし、組織問題の解決も難しいのです。
なので、大丈夫です、当たり前です。

本来、各部署で組織の問題は解決できればよいですが、ご承知の通り、余裕のある部署などどこにもありません。
だからこそ、社長が組織の問題を解決する意思決定をしなければならない時代です。
そうです。
今自分が持っていない視点を持っている人と話をすることによって、意思決定に必要な重要な情報が手に入ります。

まとめ

社長が意思決定をスムーズに行うためには、必要な情報から、考えるべき論点を見つけ、すべての問題の構造を考え、意思決定し解決すべきことを明確にする(順番を明確にする)ことが重要です。
そして、多くの場合、問題の構造を考えると、組織の問題が最大のレバレッジポイントになるという話でした。

問題が山積みであることは、全く悪い事ではありません。
前回もお話した通り、問題意識が高いということなので、成長する企業の特徴でもあります。
ぜひ様々な山積み問題の解決=実際に成長していくために、問題を解決する意思決定をスピーディに行うことをお勧めします。

山積みになった問題を解決したい、合理的な意思決定したいという方は、ご連絡ください。
(文:菅生としこ)

株式会社AWESOME EYE 代表 菅生としこ

菅生としこプロフィール

トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!

MAGAZINE
メールマガジン 好評配信中