多くの企業では、様々な戦略を立てています。
物流戦略、営業戦略、採用戦略など、戦略には多々あります。
戦略の立て方としては、今の時代を踏まえた上で、その企業が昔から培われてきた考え方や現状、社長の考え方、幹部の考え方、戦略に必要なセオリーなどが反映され、”うまくいく未来しか見えない戦略”もある一方、戦略はないに等しいなぁと感じる戦略もあります。
その代表例が、人事戦略、組織戦略です。
戦略とは、自社の最重要課題を達成するための行動計画です。
しかし、人事・組織戦略においては、どこの会社でも使えるような戦略ともいえない抽象的で汎用的な戦略で、単なるアクションリストが並べられているケースが散見されます。戦略とは言えませんね。
戦略は誰が立てるのでしょうか?
企業様によってまちまちです。
社長・幹部が人事戦略、組織戦略を立てている企業もあれば、
人事部(経営企画部、総務部など)が主となり、立案している企業もあります。
人事部をコストセンターとしてみていると人事部を機能させられません。
人事はお給料を払ったり、社長が考えた人事(人材配置、昇格など)を言われた通り実行するだけ、になっている企業では人事戦略、組織戦略が乏しくなります。
かといって、組織上人事部がある会社で、社長や幹部が人事・組織戦略を立てているかというと、そこまで手が回らないというトップも多いようです。人事戦略や組織戦略の立て方がわからない、必要性をそれほど理解できていない、なども理由の1つでしょう。
また、昔は人事戦略や組織戦略は、それほど考えなくても市場も売上利益も右肩上がりだったので、積極的に考える必要がなかった時代でもありました。
しかし、時代は変わりました。
人事部(社長・幹部などのトップ)が人事戦略、組織戦略を積極的に考えなければ、素晴らしい人材が大勢いたとしても、彼、彼女たちの力を発揮しきれない会社になります。売上利益も伸び悩み、彼らは成功体験を得にくくやりがいも感じにくく、モチベーションが下がる一方です。
人事部(トップ)が人事・組織戦略を積極的に取り組めていない状態を言い換えると、経営戦略や物流戦略、営業戦略など事業に関わる戦略を実行する人・組織を戦略的に機能させようとすることなしに、事業を成功させようとしているのと同じです。
どんな事業も人が動かすのです。
DXが進み、AIが様々な場面で導入され、様々な技術革新が進みロボット化され、少ない人数で仕事が効率的に行われたとしても、最後は人がそれらを動かすのです。
勝手に能力を発揮してくれるはずだ、という時代から、能力を発揮して事業を成功に導いてもらうための仕掛けを考える時代へと変化しています。
人材確保、優秀な人材の獲得競争が行われ続ける中、未来の自社を思い描き、どんな人材をどのように育て、どのように配置し、どんな組織を作っていけばよいのか、人事戦略、組織戦略を腰をすえて考えなければなりません。
人事戦略、組織戦略などしっかり考えなくても、うまくやれてきた時代は終わりました。
人事部はコストセンターではなく、経営戦略を実現する人材に関する戦略を考える部署と位置づけ、役割を転換することが重要です。
(文:菅生としこ)
菅生としこプロフィール
トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!