変化の激しい時代を企業として生き抜いていくためには、先頭に立って組織を導く優秀なリーダーが必要です。
しかし、「組織を任せられるリーダーがいない」「後継者となるような人材が育たない」と悩んでいる経営者も少なくありません。
このまま組織にリーダーが育たなければ、企業としての成長が望めなくなるのではと、
不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
そこでここでは、そもそもリーダーとは何なのか、リーダーに必要な資質とはどのようなものなのかを解説し、
組織の成長に不可欠な「優秀なリーダー」を育てる方法をご紹介していきます。
目次
- リーダーとは何か?
- リーダーとリーダーシップの違い
- ドラッカーが掲げるリーダーシップの定義
- なぜリーダーは苦しいのか?
- 「優秀なリーダー」に必要な素質とは?
- 組織の成長に必要不可欠な2つの「リーダー」
- リーダーが育たない企業の特徴とは?
- 優秀なリーダーを育てる方法
- まとめ
1. リーダーとは何か?
「リーダー」とは、目的を達成するために目標を定め、成功に導く道筋を示す人のことです。
企業においては、組織を一体化させ、統率する役割を担います。
2. リーダーとリーダーシップの違い
リーダーと並び、よく聞かれる言葉に「リーダーシップ」があります。
リーダーとリーダーシップは似た言葉ですが、明確な違いがあります。
リーダーは、チームリーダーやプロジェクトリーダーなど、所属する組織をまとめる役割、つまりポジションを指します。
基本的に、ひとつの組織には1人のリーダーしかいません。
対してリーダーシップは、リーダーとして活躍する「能力」そのものを指します。
目標に向かって進み、周りにポジティブな影響を与え、思わずその人についていってしまう、そういった力がリーダーシップです。
つまりリーダーシップは、「リーダーだけが特別に持つ能力」ではありません。
組織のポジションとしてのリーダーには誰でもなれるわけではありませんが、
リーダーシップは誰にでも身につけ発揮できるものなのです。
3. ドラッカーが掲げるリーダーシップの定義
マネジメントの概念を生み出したことで有名な経営学者のピーター・ドラッカーは、
著書「プロフェッショナルの条件」で、リーダーシップについて以下のように定義しています。
- リーダーシップは仕事である
- リーダーシップは責任を持つことである
- リーダーシップは信頼を得ることである
詳しく見てみましょう。
(1)リーダーシップは仕事である
ドラッカーは、リーダーシップは才能や資質ではなく「仕事」であると述べました。
組織の目的を考えて、それを目に見える形でメンバーに共有することをリーダーシップと定義しています。
そのために目標を定め、優先順位や基準を決めて、それを維持する人がリーダーです。
リーダーは、リーダーシップを発揮する行動を取り、その仕事を成し遂げる人を指すのです。
(2)リーダーシップは責任を持つことである
ドラッカーはさらに、リーダーシップを地位や特権ではなく「責任」と見ることが重要と説いています。
「リーダー」と聞くと、人に指示して率いることが仕事と思いがちですが、実はそうではありません。
リーダーシップは、自らの責任で考え、自ら動くことです。
チャレンジし、たとえそれが組織として失敗したとしても、自分の責任と捉えて人のせいにしない人が、真のリーダーです。
(3)リーダーシップは、信頼を得ることである
最後にドラッカーは、「信頼が得られないかぎり、従うものはいない」と明言し、
「そもそもリーダーに関する唯一の定義はリーダーに従うものがいることである」と述べました。
つまりリーダーシップとは、強制的に従わせることではなく、周囲が自発的に信頼し、自らの意思でついていくことを意味します。
決して役職が上だからとか、その人が好きだからといった理由ではなく、
「その人のいうことが確かだ」と、周囲に信頼される人のみが、リーダーになり得ます。
ドラッカーの3つの定義を紐解くと、つまりはリーダーがリーダーシップを発揮するのではなく、
「リーダーシップを発揮する人がリーダーとなる」ことに行き着くのです。
4. なぜリーダーは苦しいのか?
組織のリーダーとしての役割を与えられている人の多くは、「つらさ」や「苦しみ」を抱えています。
リーダーという役職のプレッシャーとストレスに、精神的苦痛を感じる人も少なくありません。
その苦しみのほとんどは、
「提案してもやろうとしない」「真剣に聞いてくれない」「思いが伝わらない」といった、人間関係によるものです。
そしてそれは、自身の信じる「リーダー像」とのギャップに由来しています。
「みんなを引っ張ること」「やる気を上げること」がリーダーのあるべき姿、理想像と思い込んではいないでしょうか?
部下を従えよう、思うように動かそうと考えていては、いつまでも苦しいままでしょう。
リーダーの仕事は、命令して引っ張るのではなく、みんなが自然と動きたくなる環境をつくることだからです。
方向と方針を示しつつ自ら目標に向かって進み、リーダーシップを発揮する人が、信頼を得てリーダーとなるのです。
リーダーでいることが苦しい人は、リーダーに対する考え方を、改めることから始めましょう。
5. 「優秀なリーダー」に必要な素質とは?
リーダーシップを発揮することでリーダーとなった人もいれば、組織のポジションとしてリーダーを任された人もいるでしょう。
しかしそこから、さらに一歩進んで、「優秀なリーダー」となる人には、以下の5つの素質が備わっていることが必要です。
- レジリエンス(折れない心)
- 自発性を促す協調性
- 判断力と決断力
- ビジョンを描く計画立案力
- コミュニケーション能力
それぞれ詳しく見てみましょう。
(1)レジリエンス(折れない心)
レジリエンスとは、トラブルや困難に直面したときに、それらを柔軟に受け止めてしなやかに回復する「折れない心」を指します。
リーダーとして目標に突き進んでいるときには、必ずといっていいほどトラブルに直面します。
思わぬ事態に陥ったとき、その状況を冷静に受け止め、感情的にならずに対応していく柔軟性が優秀なリーダーには必要です。
(2)自発性を促す協調性
リーダーがポジションである以上、チームに対しての命令権があります。
しかし、従来の「黙って指示に従え」的な支配・命令型リーダーは、現代社会では受け入れられません。
真のリーダーは、チームの信頼を得て、メンバーが自主的についてくる人です。
命令することでメンバーがイヤイヤついてくるようでは、リーダーシップを発揮しているとはいえないのです。
メンバーに信頼してもらうためには、メンバー個々の自発性と能力を引き出し、
信頼して任せ、何かあったときには手を差し伸べる、協調・支援型のリーダーになる必要があります。
リーダーとしての最終目標は、自分がいなくても各個人が目標に向けて行動し、
計画を進められる状態にすることであると考えましょう。
(3)判断力と決断力
優秀なリーダーには、判断力と決断力も求められます。
判断力とは、これまでの経験やデータから現状を分析する能力を指し、
決断力とは、現状を打破しさらに成長するために意思を定める能力を意味します。
組織として目標に向けて進んでいるとき、誰でも決められるようなことには判断も決断も求められることはありません。
リーダーが判断と決断が必要となるのは、ほかの人には決められない、結果に責任をともなうものがほとんどです。
危機に陥り、瞬時の決断を求められたときでも、覚悟を持って判断を下すことが優秀なリーダーには必要です。
(4)ビジョンを描く計画立案力
目的に対して、適切な目標を立てる能力も、優秀なリーダーには必要です。
どんな企業でも、売上や利益をあげるなど、リーダーとして結果を出す必要があるでしょう。
目標の達成に向けてプランニングすることができなければ、リーダーとしてほかのメンバーに具体的な指示を出せません。
誰が何を、いつまでにやるか決められないままでは、メンバーはどこに向かって何をすればいいのかわからなくなってしまいます。
リーダーはまず、チームとして実現可能な短期目標を明確に定め、
そしてさらにその先にある、企業としての大きなビジョンをメンバーに示すことが必要です。
(5)コミュニケーション能力
目標達成のためには、チームのほかのメンバーと適切なコミュニケーションを取ることも大切です。
メンバーを命令や指示で従わせることで得られる成果には限界があります。
業務が多様化し、求められることがどんどん高度になった今、命令型スタイルでは、いずれ社会の変化に順応できなくなるでしょう。
一人ひとりが、能動的に行動するチームを築くことが必要です。
そのためには、リーダーが会社のビジョンと自分の考えをメンバーに、しっかりと共有しなければなりません。
また、共有のゴールは「伝えること」ではありません。
「相手の理解」を得ることが目的であることを忘れないようにしてください。
6. 組織の成長に必要不可欠な2つの「リーダー」
組織を成長させていくためには、リーダーの存在は不可欠です。
なかでも、以下の2つのリーダーは、特に重要とされています。
- ミドルリーダー/管理職
- 次世代リーダー/幹部候補
それぞれどのような立場で、どのような役割を担っているのかを説明します。
(1)チームを成長させるミドルリーダー/管理職
ミドルリーダーは、いわゆる「管理職」と呼ばれる立場にある人を指します。
部署として区切られたそれぞれのチームをまとめあげる、オペレーションのトップの位置づけです。
ミドルリーダーは、企業組織を将来的に牽引していくポジションになります。
ミドルリーダーの大切な役割は、組織内のコミュニケーションを潤滑にすることです。
令和の時代になり、企業はメンバーの多様化が進んでいます。
世代、性別、国籍、スキルや経験など多様性のあるメンバーをチーム内に抱えているミドルリーダーも多いのではないでしょうか。
多様化が進むと、コミュニケーションが希薄になり、活発な意見交換ができなくなるというデメリットが生まれがちです。
今の企業はかつてのように、入社してから苦楽を共にし、互いを理解し合う関係を築きにくくなりました。
メンバーの入れ替わりが激しく、価値観が多様化しているなかで信頼関係を築くには、
これまでのトップダウン、いわゆるピラミッド型の統制型組織からの脱却が必要です。
これからはチーム内、部署内の縦横連携のコラボレーション型に進化し、
自社内だけではなく他社との企業間連携も必要になってくるでしょう。
そのような状況下のミドルリーダーにとっては、高いコミュニケーション能力を有することが必須となるのです。
(2)組織を飛躍させる次世代リーダー/幹部候補
次世代リーダーは、いわゆる幹部候補とされ、
将来的に経営を担い組織の中心となる、経営層、トップマネジメント層に分類される人を指します。
次世代リーダーの役割は、プレイヤーから脱却し、組織の未来やビジョンを創造することです。
リーダーシップがあることはもちろん、企業理念や価値観を深く理解し、
ミドルリーダーが描くよりもさらに高い視点から見た目標に向かって計画的に進む立場です。
そんな次世代リーダーには、リスクを取ってでも常に挑戦することを選べる、変革を恐れない強い心、
いってみれば「図太さ」が必要です。
変化や逆境を恐れず、何かが起こってもしなやかに対応するレジリエンスをしっかり身につけ、
状況を全社的に俯瞰して判断する力が求められます。
そのためには早い段階から論理的思考を身につけ、幹部候補と自覚したうえで経験を積み、
意識的に知識の習得をしていく必要があるでしょう。
7. リーダーが育たない企業の特徴とは?
「組織を引っ張る人材がいない」「後継者となるようなリーダーが育たない」との声をよく聞きますが、
リーダーが育たない企業には、大きく2つの特徴があります。
- ピラミッド型から脱却できない
- リーダーを育成していない
それぞれ説明していきます。
(1)ピラミッド型から脱却できない
トップダウンで人を動かそうとしているピラミッド型の統制型組織から脱却できない企業は、リーダーが育ちません。
トップダウン型の組織では、自分たちのやり方に固執するあまり、部下に仕事を任せられないためです。
組織が「言われたことを黙ってやれ」的な体質では、結果部下は指示されたことだけをやるようになり、主体性が育たなくなります。
夢を持って入社しても、そのような組織では若手がビジョンを描けません。
将来像が見えず、やがて意欲を失って、退職してしまいます。
(2)リーダーを育成していない
「リーダーシップは先天的なものだ」「人は先輩をみて育つものだ」として、
事実上リーダー育成を放棄しているような企業では、リーダーが育つことはありません。
もちろん世の中には天賦の才を持って生まれた生粋のリーダーもいます。
しかし自社にそのような人材がいないからといって、ガッカリする必要はありません。
ドラッカーが述べたように、リーダーシップは持って生まれた才能や資質ではなく「仕事」です。
仕事である以上、鍛えていけば能力を伸ばしていけるものなのです。
リーダーがいないと感じているなら、リーダーシップが身につくような取り組みをしているか、
もしくはその機会を与えるタイミングが遅くないかを自問してください。
リーダーを求めるのであれば、適切なタイミングで育てていくことが必要なのです。
8. 優秀なリーダーを育てる方法
リーダーが育つには、長い時間が必要です。
リーダーが育っていないと気づいたら、その時点でスタートしましょう。
優秀なリーダーを育てるには、5つの方法があります。
- リーダーとしての特性・資質を見抜く
- 計画的な「成長経験」
- 外部講師によるリーダー研修
- 活発な社内研修
- ファシリテーターの育成
順番に解説していきます。
(1)リーダーとしての特性・資質を見抜く
リーダーを育成するには時間がかかるため、将来を見据えて早い段階から始めることが大切です。
そのためには、早くは面接時からリーダーとして育成する人材を見据えた選抜をする必要があります。
ありがちなのは、業績のみを指針にすることです。
たしかに数値として結果を出しているといった点ではわかりやすく、冷静な判断ができますが、
データだけをもとにするとポテンシャルや意欲を見落としがちです。
今後の成長も考えるのであれば、数字で測れない「人間力」を見る必要があります。
上司と部下の1対1のミーティングを定期的に設けるなど、
社員のパーソナリティを知り得る機会を組織的につくるようにしていきましょう。
(2)計画的な「成長経験」
人材を育てるうえで、もっとも大切とされるのが「経験」です。
人材育成には、「7:2:1の法則」と呼ばれる有名な法則があります。
これは、ビジネスにおいては、
「70%を仕事上の経験から、20%を先輩・上司から、10%をトレーニングから学ぶ」ことを意味します。
人は経験を積むことによって自信がつき、できることが増えていくのです。
しかし多くの企業では、「リーダー候補」を見据えた成長のための経験を、計画的に行ってはいません。
リーダーを育てたいのであれば、いつ、どんな仕事を、どんな順番で経験させるか、育成のロードマップを作成することが必要です。
そのうえで、リーダーが成長するためのキャリアや機会を計画的に提供するようにしてください。
(3)外部講師によるリーダー研修
リーダーを育てるためのプランには、外部講師による定期的なリーダー研修が有効です。
自社でリーダーを育成しようと考えていても、日々の業務に追われてしまい、なかなか時間が取れないのが現実ではないでしょうか。
特にリーダーの育成といった、成果が目に見えづらい業務については、
つい目の前のことを優先してしまうのはどの企業でもあることです。
しかし、これまでそうしてきた結果が、今現在の「リーダーが育っていない」現状につながっていることを認識しましょう。
後回しにしていては、今のままから変わりません。
状況を打破するためにはリソースを投下して、定期的にリーダー研修を計画すると効果があります。
「リーダーを育てる」と強い意志を持ち、あらかじめ業務スケジュールに組み込んでしまいましょう。
(4)活発な社内研修
定期的な外部講師による研究が軌道に乗ったら、社内研修にも取り組んでいきましょう。
最初はプロの助けを借りながらでも、最終的には自社の力でリーダーを育てていけるようにならなくては、
優秀なリーダーが育つ土壌ができません。
自社で研修を行うときには、「今年は予算が余ったからやろう」といった突発的なものではなく、
長い目で見た長期計画を立てることが大切です。
リーダーを育てることは、組織力を底上げすることにもつながります。
リーダーとして育った人材が、次のリーダーを育てるサイクルをつくりあげていきましょう。
(5)ファシリテーターの育成
リーダーを育てるときには、同時に「ファシリテーター」を育成するのが理想です。
ファシリテーターとは、何かものごとに取り組むときに、中立的な立場から働きかけ、スムーズに進行させる役割の人を指します。
リーダーは組織の意思決定を行い、メンバーへ指示をする役割を担います。
ときにはメンバーの意に沿わない決断を下すこともあるでしょう。
そのため、ときにはメンバーの反感を買い、意見が対立することもあります。
そんなとき、ファシリテーターは中立なポジションから、意見をまとめる役目を果たします。
リーダーがビジョンを語り、ファシリテーターが組織をまとめるといったように、
リーダーとファシリテーターが両輪で企業を動かしていければ理想的ではないでしょうか。
まとめ
「リーダーがいない」と嘆いている企業の多くが、実は「リーダーを育てる」取り組みをしていません。
「リーダーは育つもの」と、ただリーダーの出現を待っているだけの企業は少なくないのです。
リーダーは組織をまとめあげるポジションですが、リーダーシップがなければチームの信頼を得られません。
しかしリーダーシップは能力であり、トレーニングすることで育てることが可能です。
優秀なリーダーが必要なら、リーダーを育てる長期的な取り組みが必要です。
AWSOME EYEでは、「リーダーを育てる」と強い意志を持ち、
優秀なリーダー育成プログラムを必要とされている企業のサポートをさせていただきます。
ぜひお気軽にお問い合わせください。