うまくいっていない上司と部下。
あなたの周りにもいませんか?

先日、とある企業の部下の方からの悲痛な叫びをききました。
それは、「上司の指示の意味がわからないんです」という内容でした。

今日はちょっと元も子もない話です。


「上司の指示の意味がわからないんです」
上司というのは、仮に課長だとしておきましょう。

指示の意味がわからないのは、主に2つのケースがあります。
・1つ目は、課長は充分詳細にしゃべっているつもりだけど、部下には抽象的に聞こえる。
・2つ目は、課長も、部長から言われた指示の意味をしっかり理解することなく、もしくは、わかった気になって、そのまま部下に伝えている。

1つ目は、コミュニケーション、伝え方、受け取り方の問題なので、比較的解決しやすいです。
ということで、今日は横に置いておきます。
深刻なのは、2つ目です。ちょっと複雑です。
どういうことか、2つ目のケースを詳しくお伝えしていきますね。

部下に指示をした時に、部下から質問されることで、自分のアイデンティティを攻撃される危機感を感じる上司(課長)のケースです。
これは、上からな物言いをしたり、自分が正しいと主張したり、自分の意見を曲げない上司に多いです。
課長としては、部下に指示をした時、部下からは細かな質問をされたくない。
しかし、部下としては「質問したい」となり、衝突が起きます。
課長が部下へ「つべこべ言わずにやれ」ということもあるでしょう。
この一言で、部下は、課長への信頼が揺らぎます。
また、「そんなこともわからないのか」と否定しながら詳しく伝えることなく、軽く伝えておしまい、
にすることもしばしば。


要するに、課長としては、『部長の言っていることを理解する力がないこと』が露呈してはまずいのです。
そのため、部下に「課長はちゃんと理解してるんですか!?」的なことを言わせないように、けん制するのです。
また、聞いてくるなオーラを出して、部下に質問させないようにし、理解に苦しむ部下をつくるのです。

または、課長は、部長の話を聞いている時には理解したつもりになる、または理解できていなかったとしても
『部長が(常に)質問しにくいオーラを出している』ために、聞きそびれます。
そうすることで、部下に負担を強いていることもあるでしょう。

いずれにしても、困った部下は、頼れるはずの課長を頼りにできません。
指示の意味もよくわからないまま行った仕事に対して、案の定
「なんでこんなことをしたんだ」
「こんなこと、俺は言っていない」
等と、部下は否定されることになります。
仕事ができないヤツ認定をされてしまうかもしれません。

これで、上司と部下の関係はよくなるはずがありません。
笑い話のようですが、実際によくある話です。
そして怖いのは、そういう上司は『僕のことではない』と認められないことです。
こうして、上司と部下の関係性は悪化の一途をたどります。

実はこれ、元をたどれば、部長や課長の能力不足に他なりません。

何を伝えないと、部下が仕事を進められるのか、分かっていない。
何があれば、部下が仕事を進められるのか、分かっていない。
解像度高く物事を見ることができていないから、具体的に伝えられない。
でも、部長、課長の能力不足だなんて、大っぴらには言えませんし、自分たちも認めたくないわけです。
だから、部下にしわ寄せがいき、部下に負担がかかるのです。

これが、経営幹部、社長レベルでも普通に起きているのです。
これは、上層部からの連鎖で起こる可能性大です。

あなたの会社は大丈夫?
経営幹部や部長、課長に「あなたもやってるよ」と事実を伝えられる人はいますか?
事実を伝える(フィードバック)ことができる人を育てるのはもちろん、内容を理解し、ブレイクダウンする能力を持っている“長のつく方”の育成を、真剣に考える時期かもしれません。

文:菅生としこ

株式会社AWESOME EYE 代表 菅生としこ

菅生としこプロフィール

トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!

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