以前からずっと読みたかった本のうちの1冊。

経営戦略立案・実行とそれに伴う意思決定、

戦略評価と組織学習が専門の清水勝彦氏の名著。

非常に面白い!

論理的でわかりやすい!

しかも、ここまで本に書きにくいことも

ズバッと書いているあたり、

著者の中での確信、

心の底からの叫びが

伝わってきました。

今日はこの名著を少々ご紹介させてください。

組織において、戦略を立てることは非常に重要だというのは

誰もが感じていることと思います。

しかし、

「戦略」はむしろあって当たり前、なければマイナスの時代になりつつあるといってよいでしょう。私はこうした状況を「戦略のコモデティ化」と呼びました。‥‥どの企業も同じような情報を使って同じような戦略を立てるため、戦略だけでは差別化ができなくなっているという意味です。

まさにその通り。

この本は約10年前の

2011年に出版されましたが、

今でも全く同じ状況が

もっと早いスピードで

繰り広げられています。

業界トップランナーのビジネスモデルや

新商品を2番手、3番手が真似をする。

1番手のアイデアを実行できたらうまくいくのです。

その繰り返し。

皆さんも、いくつも事例が

思いつくのではないでしょうか。

あえて言いませんが(笑)

しかし、それでも差が開いたり、

業界地図が塗り替えられるのは

なぜだと思いますか?

それは、どこも同じような分析を行い

立てる戦略は似てくるし、

戦略の真似もするが、

それを実行する社員が違うからこそ、

結果が大きく変化しているのではないかと

思っています。

本書では、このように述べています。

全ての人間は、みな同じように損得勘定をして合理的に動くものだという前提

がある、と。

その前提が正しいと仮定すれば、

戦略が同じなら、同じ結果がでるはず。

しかし結果が違うということは、

全ての人間は、みな合理的に動くわけではない

からだ、といういう趣旨が書かれています。

全くその通りですよね。

合理的であるとは、人間的、情緒的なものを無視してよいということではなく、人間というものをよく知った上で理にかなっていることなのです。

戦略は、多様な人間が集まる組織で

実行され、

人間なので情緒的に物事を判断することも

ある前提で、実行されるのです。

だからこそ、

戦略を立てることも重要だが、

それと同じくらい、

いや、

業界のトップランナーでなければ、

それ以上に、

“戦略を実行できるか否か”

が重要なのです。

この本には、

戦略の実行の失敗を分析した時の

あるある話の間違った前提についても

指摘しています。

どれも「その通り!!!」と

思うものばかりで、非常に面白いのだが、

1つだけ紹介します。

(失敗の原因は)時間・準備不足

「前提:時間をかけ、準備をきちんとして取り組めば、実行もうまくいく」

本書では、

どれだけ時間をかけても、どれだけ情報を集めても

「十分」ということはない、と言っています。

そこについたと思ったときには、すでにゴールは先に動いており、決して追いつくことはできないのが、現在の市場、競争環境を冷静に見たときの戦略の実行に関する「準備」と「十分」の関係

私たちは、世の中の変化の大きさや

変化の速さをよく知っています。

私たちの準備より世の中の変化の方が早いのです。

だからこそ、

「やりながら行動する」

アクションラーニングが

求められていると思っています。

どうしても全員が合意することが必要だという戦略の「核」となる目的については徹底的に議論し、合意する一方、それでないところについては、ある時点で決めて進むことが必要です。(間違っていたら直せばいいのです。)

全てのレベルで100%の合意を目指していては、

物事は決まっていかないし、

進んでいかないからこそ、

核心部分だけは100%合意をする。

(どのレベルにおいても)100%合意ができないにもかかわらず戦略を実行していくためには、決まったことは実行するのだという潔さ、制約に対しては反対や抵抗ではなく想像で乗り切るのだという気概、いってみれば実行の文化が必要

と、戦略と実行について述べています。

多くの企業様では、

経営者・経営陣が戦略を立てますが、

そこへの合意がないまま進んだり、

実行の文化がなく、

戦略の実行スピードがあがらなかったり、

途中がとん挫したりすることもあります。

いかに戦略を実行できる組織にしていくのか

が非常に大きなカギを握っているのです。

そして、前述しましたが、

その戦略を実行するのは、社員です。

本書の副題は、

-組織的コミュニケーションとは何か-

企業の中にいると、

コミュニケーションは、

「戦略」というものとは

比べ物にならないほど

軽く見られている節があります。

幹部には「戦略立案の研修をさせたい」と

いう話はよくお伺いしますが、

「コミュニケーションの研修をさせたい」

とはほとんど聞きません。

この本では、

半分以上が、

組織を実行する際の

コミュニケーションについての記述です。

コミュニケーションが実行に

大きな影響を及ぼしている、

と書かれています。

社員が社員同士話し合い、

アイデアを出し合い、

うまくバトンを渡し合い、

実行への弾みをつけながら、

具体的行動に落とし込むためには

コミュニケーションなのです。

コミュニケーションとは、「送り手が受け手と意味を共有するための、対話、会議、メールなどを含めた様々な行動」と定義

しています。

言い換えると、

コミュニケーションの本当の目的は「共有する」こと、単に情報量が増えるというだけでなく、お互いの立場をよく理解すること

とも書かれています。

ロジカルなコミュニケーションの土台には、

必ず価値観があり、

その価値観が共有でいなければ、

ロジカルなコミュニケーションさえ

成立しないのです。

お互いの立場や考え方を理解し、またそれによってそれぞれの価値観や考え方の幅を広げ、win-winの方策を見つけたり、良い妥協をすることで組織として前に進むということこそが、組織の実行力の本質ではないでしょうか。

その意味で、コミュニケーションとは大変な労力が要るものなのです。

しかし私たちは、より早く、より合理的に

物事を進めようとするために

コミュニケーションの労力をなるべく

少なくしようとしてきました。

しかし、この本書に書かれているように

意味を共有しようとする場合、

コミュニケーションにかける労力を少なく

することで得られるものより、

失うものの方が多いのではないかと

思うのです。

戦略の実行を、

人間ではなく、

機械やロボットが行えるのなら

コミュニケーションは

必要なくなるかもしれませんね。

しかし。

戦略の実行を人間が行うのであれば、

私たちは社員を

感情ある人間として、

多様な価値観や多様な考え方を

持っている一人一人の

人間として尊重し、

敬意を払い、

共にそれらを共有するコミュニケーションを

怠ってはいけない!!!と

心から思える名著でした。

戦略を実行できる組織を、

そこに尽力してくれる社員を

どう育てるか、

これが企業成長の鍵だと

更に思いを強くしました。

社員さんと同じ人間として、

会社のことを思う同じ社員として

共に手を取り合って戦略を実行していきたいと

強く思った読書タイムでした。

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