従業員にこんな質問をしてみてください。

「あなたが今やっているその仕事の目的は何ですか?」

「その仕事はなぜ必要ですか?」

社長の皆様に、「あなたの会社の従業員の方はこの質問にどの程度答えられると思いますか?」とお伺いをすると、約9割の方が「だいたいわかっていると思います。」とおっしゃいます。

一方。

コンサル契約いただいた企業様には、最初に従業員の方に同様の質問「仕事の目的」「仕事の必要性・重要性」をヒアリングさせていただきます。
すると多くの場合、「だいたいわかっている」という社長の予想と、従業員の答えにはかなり乖離があります。
従業員からは、自信がない回答だったり、間違った答えが返ってきます。
一番多いのは、どの会社の従業員に聞いても同じ答えになる「お客様に喜んでもらうため」です。
間違っていませんが、突っ込んで話を聴くと9割があやふやな回答になります。
社長に事実を伝えると「これだけ話をしているのに伝わっていないのか」と最初は愕然とされます。
それほど、社長の言葉を社員に伝えるのは難しいのです。
これは、社員が1000名を超える大企業でも20名ほどの企業でも同様です。

あなたの会社では、社長の想いや会社の目指すビジョンは伝わっていますか?

それでも仕事は回っている!

それでもほとんどの企業では、表面的には大きな問題なく仕事は回っています。

従業員は目標・ゴール・目的が曖昧でも、ちょっとした教育があれば、指示されたことを指示された通り実行できます。
ですから、上位者が作業手順を教える教育ができ、適切な業務付与ができれば、会社としての仕事は回ります。大抵上位者はプレイヤーとして優秀な方なので、業務内容に大きな変化があったり、新しい業務だったり、仕事量が増えない限り対応ができます。
それはあなたもご存知だと思います。経営者としてはひとまず安心です。
これが、トッププレイヤーを昇格させる大きなメリットです。
たとえ、マネジメント力が不足していても、なんとか回ってしまうのです。

しかし、どこかで不安を感じている社長も多いのではないでしょうか。

2つの不安を紐解きします

実は、このやり方には問題が2つあり、これが不安につながっているのです。
この問題・不安を少し紐解いてみたいと思います。

1つ目。

従業員一人一人に考える余地(時間、情報、重要性・必要性)を与えませんので、従業員の考える力を奪い、思考停止状態を引き寄せます。
自発的に考え行動する人材になるような仕事の与え方ではありませんし、やる気を奪うことでもあります。従業員の思考停止を感じたことがある方も多いでしょう。

2つ目。

業務内容の変化、新規業務への対応、仕事量の増加などが重なると上位者がパンクし、機能しなくなるのもご承知の通りです。
立てた目標が達成されなくなったり、指示したことが実行されなくなったりしたら、組織や上位者が機能しなくなっている状態であるというサインです。

そうなるとよく行われることは、
・一時的に仕事量を減らす
・急な採用
・目標の下方修正
・目標管理の徹底
・上位者の評価を下げる、降格
・人事異動
・組織再編成
などです。

しかしこれらは殆ど場合が対症療法です。一旦問題が解決した気がしますが同じことが繰り返されます。そして、またうまくいかなくなると対症療法でその場をしのぎます。
これが続くと、従業員や組織を疲弊させます。考えて行動する能力があっても行動できなくなってしまいます。
こうなると、本当はポテンシャルは非常に高いのに、力を発揮できていない状態になり、たとえて言えば、「一億円当選している宝くじをタンスに入れっぱなしにしている状態」です。
本当にもったいないですよね。

自発的に考え行動できている状態がまさに力を発揮している状態です。

このような不安が現実となってきているからこそ、その証拠に、管理職のマネジメント力をあげたいというご依頼が非常に増えています。
今までは不安だと思っているだけでやり過ごせていましたが、何とか仕事が回っている時期は終わったと感じ、なんとかしなければ、と動き始めている企業様が増えているということでしょう。

まとめ

仕事の目的や重要性、ビジョンがわからなければ指示されないと動けなくなります。
社員のポテンシャルは高くても、ポテンシャルの高さに気づくことすらできません。これでは社員はやる気は減退します。
そして、変化が激しく、ニーズが多様化し、柔軟でスピーディな対応が求められる現代では、どんなトッププレイヤーだった上位者でも大きな負担がかかり、目標達成しにくくなり、上位者の負担増は部下への負担増へと連鎖し、部下も組織も疲弊し、組織の弱体化に繋がります。

あなたの会社は疲弊していませんか?

負のスパイラルを止める方法

この負のスパイラルを止める方法は、自発的に行動できる社員を増やすことです。

自発的に考え行動する人材になってもらうためには、まずは

・「仕事の必要性・重要性」「仕事の目的」「仕事のビジョン」を明確にし、
・社員が頭に思い描いたことと、社長が頭に思い描いていることを少しでも一致させる

取り組みをすることです。

それが、社員のやる気を高め、企業が望むような成果をあげる人材に育てる方法の1つです。
非常に重要なポイントですので、ぜひやってみてください。

さて現在、自発的に行動できる人材を育てる方法を整理・体系化しています。再現性があり、どんな会社でも「自発的に行動できる人材を育てる」ことができるようになる方法論としてまとめています。まもなくリリースする予定です。
楽しみにお待ちください。

(文:菅生としこ)

株式会社AWESOME EYE 代表 菅生としこ

菅生としこプロフィール

トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!

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