戦略や中期経営計画、今期の目標を明確にしている企業様では、どうやって実現させようか考える時、具体的なアクションプランを考え、誰に任せるかを考えるのではないでしょうか?
場合によっては、誰に任せるか考え、その人物にアクションプランも考えてもらう、ということもあるかもしれません。

適任は誰かを考えた時、思い浮かぶのは誰ですか?
業務によって思い浮かぶ人物は毎回異なりますか?
同じ顔ぶれになっていませんか?

いつも同じ顔ぶれであれば黄色信号点滅です。
企業様によっては、毎回同じ人物、何か新しいことを任せられる人は一人しかいないということもありますよね。
特定の人物に業務が偏っていいませんか?

新しい業務は特定の人物に偏りがち」の場合には要注意です。

新しい業務on新しい業務

中期経営計画や今年の重点目標などを実行する場合には、新しい仕事のやり方や仕組みを考えることが必要です。
その上、新しい取組をするときに任せられるのは特定の人物しかいないのであれば、必ず業務過多になります。
いつも任されるAさんは実行中の新しい取組の上に、新しい取組が重なり、そして時には、また別の取組が割り振られるのです。

少し想像してみてください。

新しい取組というものは、大抵新しい挑戦なので、経験や知見がありませんし、失敗するかもしれないので、慎重になります。
また、多様な視点から検討しなければなりません。
情報を入手するにも社内には情報が少ないため、入手も困難です。
なかなか思ったように仕事が進まないのが現実です。
そして、プランニング・フォールシーと呼ばれる現象で、人は自分の作業完了にかかる時間を平均で39%少なく見積もる傾向があるという研究結果(心理学者のロジャー・ブーメイスターらの研究)があります。
指示を出す側も、指示を出される側も、平均して39%時間を短く見積もるのです。

そして、あれこれやっている間に、社長から次の新しい取り組みの命が下ります。

社長は悪気はありません。
「Aさんに依頼したが、Aさんが部下に仕事を任せたらよいから大丈夫だろう」と考えるのです。
もちろん想像より、はるかに時間がかかるとは思っていません。
Aさんに頼れる部下が複数いる場合は問題ありません。
適任な部下を選定し、仕事を依頼し、マネジメントだけAさんが行うことで解決します。
Aさんがマネジメントができればうまく回ります。

しかし、社長がいつも同じ課長の顔しか思い浮かばないということは、社員が育っていない、育てていないということ。
ということは、Aさんが仕事を任せられる部下も育っていない可能性大です。
そうなると、新しい業務を重ねて依頼されたAさんの心の中では、
「この前、着手した取り組みもまだ途中なのに、新しいことを指示された。困ったなぁ。でもやらないわけにはいかない。誰かに頼みたいけれど、頼める人がいない。仕方ないからこっちも頑張るか。」
といった具合です。

そして、社長は次々とやった方がよいこと、やりたいこと、が頭に浮かんできた時、またAさんにその業務を依頼することになります。

Aさんの心中は、
パターン1:「更に新しい業務、勘弁してくれ。けれどやらないわけにはいかない。私が必死でやるしかない」となるのです。

もしくは、
パターン2:「更に新しい業務、勘弁してくれ。頑張ったら頑張っただけ、どんどん仕事が増える一方だ。もう無理だから、しばらく放置しよう。言われたら、言われた時に着手しよう」と開き直ります。完全にモチベーションダウン、生産性ダウンです。

パターン1の場合、これが続けば課長は疲弊します。
責任感が強い課長であれば、過剰なストレスがかかり、疲弊しきってメンタルダウンか、心の中ではやってられるか!とちゃぶ台をひっくり返して離職です。

パターン2は、社長がやりたいことが実現されませんが、Aさんのモチベーションダウンを招くだけで、メンタルダウンにはなりません。
パターン2では、ここで社長から「なぜやれないのか、早くやるように!」と喝が入ると、パターン1に突入する可能性大です。

あなたの会社は大丈夫ですか?

極端な例を挙げましたので、「そんなこと、ないない」と思っていませんか?
経営者は、うちに限って大丈夫と言いますが、社員に話を聴くと、これに近い状況で、モチベーションダウン、生産性ダウンしていくケースがかなり多く見受けられます。
規模や役職は関係ありません。

これは会社にとっても、経営者にとっても、社員にとっても悲劇です。
行きつくところまで行く前に手を打たなければ、素晴らしい人材の輝きを失うことになります。
ちなみに、これは会社の体質・構造なので、常に連鎖が起きます。
最初はAさんへのストレスかもしれませんが、Aさんがドロップアウトすれば、次はBさんにストレスが移るだけです。
ストレスでメンタルダウンになるか、こんな会社やってられるかと離職するか、そこそこの仕事にしておこうとモチベーションダウンし本来持っている力を発揮できず、生産性ダウンさせ続けるか。

そんな選択、できればしたくないですよね。

この連鎖を止める手段は、「人材育成・人事管理」と「業務のマネジメント」です。
仕事を任せやすい体制や、社内で業務マネジメントできる仕組みと個人のマネジメント力アップ、そもそも仕事(問題解決・課題達成)ができる人材の育成で必ず解決します。

今回は、新しい取り組みを任せられるのは、特定の人物しかいないという極端なケースでお話をしました。
しかし、ここまで極端ではなくても、似たようなケースはよくあります。
幹部が突然辞めてしまった、期待していた部長が突然離職、体調が悪いと思っていた課長が心的ストレスで長期休業、どの話も実話ですが、社長は寝耳に水の場合が多いです。
ここまでにならずとも、社員のモチベーションが低い、生産性が低い、自発的に動かないという場合は、「人材育成・人事管理」と「業務のマネジメント」は大きな鍵です。

株式会社AWESOME EYE 代表 菅生としこ

菅生としこプロフィール

トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!

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