たまにいただくご質問、ご意見などの中で気になったことについてお話したいと思います。
それは、「社員の育成に感情への配慮は要りますか?」というご意見です。

菅生なら、大きな声で「もちろんです!!!」と即答します。
あなたはどう思いますか?

この数十年の世の中の話を、先にさせていただきます。
以前は、ビジネスにおいては感情面は見ないことが良しとされ、物事を論理的に考えることが大切だと考える時代が長く続きました。
「仕事は好きとか嫌いとかでするものではない」、「女性は感情で仕事をするから困ったものだ」、「これをやったらうまくいくんだから、つべこべ言わずにさっさとやれ」、など、『社員の感情は無視してもいいんだ』、『無視したほうが早く仕事がはかどる』といった風潮があったように感じています。
その当時では、正しいとされていた考え方だったように思います。

市場が拡大し、一億総中流と言われた時代で、世の中で流行っていることを自社でも可能な限りスピーディに取り組むことが、売上を上げ、利益をあげる方法でした。
少品種大量生産販売全盛期です。

ですから、1人1人が考えて自ら動くことは全く求められておらず、それどころか8~9割の社員は自主性を発揮せず、言われたことだけやり続け、個性のない紋切り型の金太郎飴のような社員が大勢いる会社が成果をあげてきました。
当時は買い手市場が続き、わかりやすく言うと「嫌ならやめてもらっていいよ」というスタンスでしたので、金太郎飴の感情を考える必要がありませんでした。
生産性の低い社員は窓際にうつってもらう、という人事がまかり通ったのは、窓際に追いやられた人の感情を考えなかったからではないでしょうか。
その方が全体の生産性があがるから、という理由でしょう。
それが、その当時の正しさです。


当時の暗黙の常識をあえて言語化すると、社員を利益をあげるための道具・機械の一部として捉えたり、機械の歯車のように替えがきく部品だと捉えていた、と言えるのではないでしょうか。
感情に配慮するような面倒なことにエネルギーを割くこと自体が、もったいないと感じていたのではないかと思います。
もちろん、全員が同じ感覚だったわけではないと思いますが、日本全体、世界全体がそのような風潮にありました。
50代中盤以降の方々は、そのような時代を経験しているので、それが正しいやり方だと思ってはいないかもしれませんが、今もまだ、どこかでその感覚を引きずっているかもしれないと感じることもしばしばです。


しかし現代の人材不足時代は、社員一人一人の多様性を大切にし、社員を人間として尊重しないことには、会社に定着してもらえません。
気軽に「会社辞めます」と言われる時代です。
どうしたら「辞めたい」と言われないか考え、どうしたらこの会社で働きたいと思ってもらえるか、どうしたら会社のために頑張ろうと思ってもらえるか、をマネジメント側はいつも考えているのです。
「意欲が低い」「モチベーションを上げたい」「やる気がない」という部下を、何とかしたいと思われている方も多いと思います。

そうなのです。
まさに、部下の感情を変えたい、プラス感情を持ってもらいたいと考えているのです。
感情に配慮をしなければ、部下の感情は変わらないのです。

だからこそ昨今は、部下育成、部下のモチベーションアップにより、部下の成果を上げたいと考えるマネージャーは、常に社員の感情に配慮をし、関係性・信頼関係を築く努力を惜しんでいるようではうまくマネジメントできないのです。

あなたは、自分の感情・気持ちを考えてくれない人と、一緒に仕事がしたいですか?

(文:菅生としこ)

株式会社AWESOME EYE 代表 菅生としこ

菅生としこプロフィール

トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!

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