人とのいざこざがある時は、必ず負の感情が伴っています。

相手の感情・気持ちを考えることができて、最初から配慮できたら、いざこざは起きませんよね。
でも実際にはこの世の中、いざこざであふれかえっています。
それはなぜか?
今日はそんなお話です。

「相手の立場に立って考えなさい」

これに近いことを言われたり、聞いたことはありませんか?
相手の立場に立つということは、相手の世界の中で相手が見えている世界を見ること。
自分がいつも見えている世界ではない世界を見に行くことです。

相手の世界の中で相手が見えている世界を見る、というのは言い換えると、相手がどのようなものさしで物事を見ているか、判断基準は何か、どのような価値観を持っているか、どんなこだわりを持っているか等を理解し、自分がそのような目で、物事を見るということです。

かなり難しいですよね。

そうなのです、自分の価値観や判断基準でさえ、あやふやなこともあるのに、相手のことを深く理解し、相手の立場に立って想像する、考えることは、仮にできたとしても、あくまで憶測でしかないのです。
自分が経験したことや、自分が持っている価値観や判断基準やものさしが相手と似ている場合に限り、なんとなく想像し、わかった気になれる程度です。

人と接する時の前提

人は常に自分の見えている世界の中で生きています。
逆に、自分の見えていない世界のことは理解できません。
当たり前の話なのですが、このことをわかっているようでわかっていないから、人と人はうまくいかないのだろうなぁと思っています。

わかりやすく言うと、自分と他者は別の人間だということです。

常に、相手のことは理解できない相手の見えている世界は自分にはわからないという前提で人と接することが人間関係をうまく保つコツです。

逆に、なぜわかってもらえないのだろうではなく、何も言わなければわかってもらえなくて当たり前だから相手に伝え、相手の話を聴き話し合おうとすることが大切なのです。

わからないから教えてほしい、というスタンスです。
分かった気にならず、分かったと思い込まず、素直に相手の話を聴く耳を持つことが非常に重要です。

管理職と部下がうまくいかない

先日もある管理職が部下の行動についてこうおっしゃっていました。

「ちょっと考えたらわかることなのに、なぜxくんが嫌がるような〇〇したのか。考えが浅い、配慮が足りない」

こうなると、管理職の方は部下へのイライラ、ストレスを感じます。
ご本人は、口ではそんなにイライラしていないと言いながらも、態度や言動に必ず現れますので、部下もそのような管理職の感情の機微に気づき、管理職への不満となるのです。
基本的には、相手の立場に立つことは難しいという前提に立った方が人との会話はうまく進みます。

この管理職の方も、xくんの気持ちは部下にはわからなかったかもしれないな、どうやったらうまく運んだのだろうかと考えることが必要です。
こういう場合、大抵の部下は、「自分だったら、〇〇をされても気にならない。だから相手も気にならないだろう」と考えます。

そんな時は、数人の部下や同僚と一緒に

「Aくんだったら、こういう場合どう思う?」

「Bくんだったら、こういう場合どう思う?」

「Cくんだったら、こういう場合どう思う?」

などと何人かにそれぞれの見えている世界を語ってもらうのです。
ポイントは、Aくん、Bくん、Cくんの見えている世界(事実)を見せるだけです。
見せることで、自分との違いに気づくのです。
こういうのをフィードバックと言います。
人はフィードバックから気づきを得ます。
気づきを得ないと変われないのです。

いくら上司が「相手の立場に立って考えるように」と言ったところで、

「これからそうします」という不毛な会話が生まれるだけです。

(文:菅生としこ)

株式会社AWESOME EYE 代表 菅生としこ

菅生としこプロフィール

トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!

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