先日、とよたビジネスフェアに出展させていただきました。
こじんまりしたビジネスフェアでしたが、二日間で、100名以上の方に弊社ブースに足を運んでいただきました。
心より感謝申し上げます。

コンサルもいろいろだと改めて思った出来事があったので、それについて書いてみたいと思います。
同業のコンサルタントさんが、弊社ブースにご挨拶に来てくださった時のことです。
「実は僕も組織をまとめる仕事してるんです。同じですね」とおっしゃいました。
お話をお聞きしていると、定年退職後、そのお仕事をなさっているご様子。
そして続けて、「中小企業はトップダウン経営がうまくいきますよね」とおっしゃいました。

「同じですね」と言われたけれど、『良いとか悪いとかではなく、私とは考え方違うな』と思ったお話です。
私は、これからの時代、多くの会社においては、トップダウン経営では企業活動縮小を余儀なくされると考えているからです。

時代は変わった

その方がビジネスマンとして活躍したのは、まさに、画一的な価値観の中で、市場がどんどん拡大している中、商品を出せば売れる時代。
経営者、経営陣だけが市場を見て、指示すれば充分でした。
従業員はとにかく言われたことを素早くこなし、一人一人の個性は出さない方が成果が上がった時代だったのです。
昔は殆どの企業がトップダウン経営でした。
そのコンサルタントは、いわゆるトップダウン経営全盛期に大活躍したという成功体験があります。

当時の従業員のやる気の源は、上がり続けるお給料や、物質的な豊かさを追い求め、ほしいモノが世の中にたくさんリリースされ、ほしいモノが買える幸せ。
多くの方の仕事へのモチベーションはそれで充分だったのです。
「いつかはクラウン」という言葉が、流行するような価値観が似通った時代でした。
人を機械のように扱い、使いものにならなければ使い捨てることができるほど、人材確保に困ることはありませんでした。

その時代に自分が成果を上げてきたコンサルタントは、そのような成功体験を持っているので、やはりトップダウンの方がうまくいくと判断します。
事実、過去はトップダウンで軍隊のような組織が成果があげていたのです。
補足しておきますと、そのコンサルタントが間違ったことを言っているわけではありません。
トップダウン経営がうまくいくかどうかは別として、トップダウン経営をしたい中小企業の社長さんはたくさんいらっしゃるので、そのような社長さんを支えるコンサルタントとして素晴らしいのだと思います。
菅生は、トップダウン経営をしたい社長の支援者にはなれない、というだけの話です。

では、“中小企業でトップダウン経営はうまくいくのか?”について、今日は菅生の見解を述べたいと思います。

ご承知の通り、昨今は昔とは全く状況が違います。
モノがあふれかえり、価値観の多様化、人口減少で国内市場減少、人材確保が困難、誰もが(競合も)多くの情報を手に入れられる時代です。

経営スタイルは実現したいビジョン、ミッション、市場・お客様の価値観、ビジネスモデル、企業のステージ、企業規模、従業員の意識や価値観などによって変えなければなりません。
昔、企業活動がうまくいっていた頃と同じ環境であれば、経営スタイルを変える必要はないと思います。
しかし、環境が変わっているのであれば、調整しなければなりません。
社長や経営陣の好みで決めるのではなく、未来に向けどのように経営をしていきたいか、で調整するべきだと考えています。
経営スタイルは、組織を機能させるために重要なファクターです。

トップダウン経営がうまくいかない理由

今の時代にトップダウン経営がうまくいかない理由は二つあります。

1つ目は、世の中のスピードについていけない

2つ目は、一体感なくやる気の低い寄せ集め組織になる

です。

トップダウン経営はスピードが遅い

1つは、対応スピードが遅くなり、世の中のスピードについていけなくなることです。
今の時代はご承知の通り、自社にとっての有益な情報を素早く入手し、判断し、行動しなければなりません。
しかも、熟考するより、素早い行動から結果を振り返り、ブラッシュアップし続けることの方が重要です。
PDCAを回し続けてようやく成果が見えてくるのです。
そのため、経営陣だけが判断し、指示をしないと動かない組織や人では、成果が見えてくるまでにとてつもない時間がかかるのです。

成果が見えるまで時間がかかれば、途中であきらめてしまうので、投入したリソースが無駄になります。
成果が見えるまでに時間がかかれば、その間に市場やお客様が変化することもあるでしょう。
それ以前に、経営陣の指示が一般社員まで伝わるまでに時間がかかるのは、よくご存じの通りです。
指示が的確に伝わらないことも多々ありますね。
指示をしても、動かないと嘆く組織も多いのではないでしょうか。

だからこそ、トップダウンで指示をすることで組織を動かすのではなく、方向性は示すが、従業員一人一人がすべきことを理解し、そのために行動しようという意思や意欲がなければ、ビジョンや目標は実現しないのです。
モチベーションや目標へのコミット、会社へのエンゲージメントなどが必須の時代です。
トップダウンの方が早い、と思われる人もいると思いますが、確かにそういう場合もあります。
いくつかの条件がそろった時はトップダウンが最高です。
その1つは、スタートアップ企業です。
他にも超軍隊組織、人の気持ちは無視できる組織、などなど。

トップダウン経営はモチベーションを下げる

2つ目の理由は、トップダウン経営は個人の個性を認めないために、社員のモチベーションやエンゲージメントをさげるからです。
その結果、一体感なくやる気の低い寄せ集め組織になってしまいます。
言い方を変えれば、同じ空間で働くけどバラバラな組織です。

従業員一人一人は、世の中は価値観の多様化への対応が進んでいる状況を見る一方で、自社を見てこう考えるのです。

「うちの会社はいまだに多様性を認めず、個は尊重されず、とにかく目標達成だけを追い求める指示だけがこだまし、あれやれこれやれ、そのやり方ではなくこっちのやり方でやれ、と言われる。
僕の個性・強みを活かした場はないし、僕の意見やアイデアは必要ないんだ。
であれば、この仕事は僕じゃなくてもよいのでは?」

そして、モチベーションが下がり、会社や経営への不信が募っていきます。
その結果、「自分の力を発揮できない、自分を認めてくれていない」と感じる若手・中堅の優秀な社員が辞めていくことも増えています。
人材確保が難しい時代に、優秀な社員が辞めていけば、将来への経営が不安定になりますよね。

今日は少し大胆に考えをお伝えしました。

100%ボトムアップにすることがよいわけでもありませんので、トップダウンで行う割合を都度考えたり、場面によってはトップダウンで行うべきこともあります。
企業の規模や今のステージによっても変わります。
トップダウン経営が全くダメなわけでもないのです。

一度立ち止まって考えてみてはいかがでしょうか?

あなたの会社は、今どんな経営スタイルですか?
今の経営スタイルで、経営はうまくいっていますか?
今後、どんな経営スタイルが理想でしょうか?

今まさに調整中の企業様もおありだと思います。

ご質問があればお寄せください。

(文:菅生としこ)

株式会社AWESOME EYE 代表 菅生としこ

菅生としこプロフィール

トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし!問題があるからオモシロイ!

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