前回の【戦略人事シリーズ】では、ビジョンと戦略についてお話しました。
今回は、「戦略の実行」に話を進める前に、『良い戦略と悪い戦略』についてお伝えしておきたいことがあります。
戦略人事とは、戦略を実行する組織や人事をどうつくるか、という話です。
それが、企業の未来に大きな影響を及ぼします。
ということは、立てた戦略が良い戦略である ということが大前提なのです。
ですから、戦略が悪ければ、いくら組織や人を立て直したところで、会社の経営は上向きません。
- 売上はあがらない、
- コストはかさむ、
- 利益はあがらない、
- 従業員のモチベーションはさがる、
- 達成感なく疲労感しか感じられず離職する、
という悪循環に陥ってしまいます。
経営に携わる方にとっては、「戦略の良し悪しくらいわかってます」という話かもしれませんが、改めてお伝えさせていただきます。
悪い戦略
良い戦略と悪い戦略。悪い戦略はわかりやすいです。
それは、他社と同様の戦略です。
同様な戦略になる場合に何が起きているかというと、大抵、主に外部分析から戦略を考えています。
外部分析をすることが間違っているわけでは、ありません。
外部分析も非常に大切です。
その上で、どの程度内部分析ができているか、ということが重要なのです。
外部分析メインの戦略は、たとえ大手有名コンサルさんの支援のもと、世界に先駆けた素晴らしい戦略を立案したところで、
すぐに他社に真似されてしまいます。
分析結果は、同じ結論になるということです。
そして、戦略も似たようなものになるということです。
良い戦略
では、良い戦略とは何か？
それは、内部分析と外部分析を行き来しながら、練った戦略です。
ポイントは具体的で丁寧な内部分析です。
内部分析する時の視点は、いろいろあります。
例えば、自社のお客様、お客様との関係、販売チャネル、提供している価値、独自資産（人やお金なども含む）、価値を生み出す活動、ビジネスパートナー、キャッシュポイント、収益システム・モデル、コスト構造など。
また、経営者目線だけでなく、社員目線、お客様目線での分析も視野が広がります。
そして、昔、今、未来と時間軸を変えて分析することも大切です。
このようにして、具体的で丁寧に内部分析するからこそ、外部環境に照らし合わせた時に、唯一無二の他社に真似されない戦略ができるのです。
真似されない戦略がなぜ大切なのか
戦略を真似されるということは、同じ戦略をとれる、ということですよね。
それによって、何が起きるのでしょうか。
たとえば、同じ戦略をとっている企業がここに２社あります。
Ａ社は企業としての成長は近年著しく、規模も大きくなり、資金力もあります。
Ｂ社はゆるやかな成長を重ねており、規模は大きくなってきましたが、資金力はそこそこです。
同じ戦略をとったとしたら、明らかにＡ社に軍配があがりますよね。
もしもあなたの会社に、豊富な資金・資金調達力や社員を含めた豊富な資源があり、そして戦略の変更に容易に対応できるレジリエンスの高い組織・人がそろっていれば、真似される戦略でも全く問題ありません。
資金を投入し、人材を投入し、仮に真似されて負けそうになったら、また戦略を変えたらよいだけです。
戦略の変更に対応できるレジリエンスの高い組織・人ならば、新しい戦略にも対応してくれることでしょう。
しかし、多くの企業はそういうわけにはいきません。
もしかしたら、「戦略なんて大きなものはないよ」「うちは他社でやっていることを真似する戦略だよ」という企業様もあると思います。
このような企業様は、それで経営がうまくいっているのであれば、うまくいっている自社をしっかり分析をすることで、より経営が安定する戦略を明確に立てられるはずです。
“私たちの会社だからこその戦略”を立てる、そのような戦略を意識するということが大変重要です。
良い戦略とは、私たちの会社だからこそ取れる戦略なのです。
次回は、その素晴らしい戦略を実行する部隊（組織・人）についてお話したいと思います。
文：菅生としこ
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菅生としこプロフィール
トヨタ自動車出身。組織づくり、人づくりのど真ん中で働いた原体験からはたらくを面白がる達人。
“トヨタの問題解決”を整理体系化し、広く展開。問題解決できる人材開発を行った立役者。
事業の問題解決、人が関わる問題解決、変化成長し続ける組織づくりのための問題解決サポートを得意とする。
問題なくして成長なし！問題があるからオモシロイ！
